お気に入りの器が欠けてしまったり、割れてしまったとき。
「捨てるしかないかな…」と思いながらも、なかなか手放せないことはありませんか?
そんなときに知っておきたいのが、日本の伝統的な修復技法である金継ぎです。
ひびや欠けを「傷跡」として隠すのではなく、あえて美しく見せて生まれ変わらせる——。
この記事では、これから金継ぎを始めたい人向けに、
- 金継ぎって完成までどれくらいかかるの?
- 初心者に金継ぎキットをおすすめする理由
- どんなセットを選んだら良いか?選び方のポイント
- 金継ぎキットを買ったら全体の流れを掴んでみよう
- 最初にチャレンジする時の器選びと難易度
この5つのテーマで、やさしく解説していきます。

◆金継ぎって完成までにどれくらいかかるの?
まず知っておきたいのは、「金継ぎは時間がかかる」ということです。
特に本漆を使った本格的な金継ぎは、乾燥や硬化に待ち時間が必要になります。
本漆の金継ぎの場合
- 小さな欠けなら:早くて 3〜4週間
- 大きな割れやパーツが多い場合:3か月以上 かかることも
実際に手を動かしている時間は数時間でも、
- 塗る
- 乾かす
- 削る(研ぐ)
- また塗る
- 乾かす…
という工程を何度か繰り返すため、期間はどうしても長くなります。
簡易金継ぎの場合
最近は、エポキシや合成樹脂を使った「簡易金継ぎキット」も増えています。
- 乾燥が早く、数日〜1週間程度で形になるものも多い
- ただし、本漆に比べ食器に使うには注意が必要な場合があることも覚えておきましょう。
心構えとして大事なこと
金継ぎは、「すぐに直してすぐに使う」というよりも、
“待つ時間も含めて楽しむ手仕事” です。
ゆっくり進める前提で取り組んだほうが、
焦らず、失敗も少なく、作業そのものを楽しめます。
◆初心者に金継ぎキットをおすすめする理由
これから金継ぎを始めるなら、最初は「金継ぎキット」から入るのがおすすめです。
理由はシンプルで、「準備のハードル」をぐっと下げてくれるからです。
道具と材料がひと通りそろっている
パテ、漆(または代用樹脂)、筆や竹串、やすり、金粉/代用金属粉など、
一から自分で集めようとすると、かなり手間がかかります。
キットなら、
- 「これさえ買えば、とりあえずスタートできる」
という状態まで連れていってくれるのが大きなメリットです。
手順がマニュアル化されていて迷いにくい
多くのキットには、
- 写真付きの説明書
- QRコードから見られる解説動画
などが付属しており、次に何をすればいいかが分かりやすいです。
独学でバラバラに情報を集めるより、ずっとスムーズに進められます。
道具選びの失敗を防げる
「とりあえず買ったけれど、使いにくい」「余っても使い道がない」
という道具を減らせるのもキットの良いところ。
初心者向けキットは、
- 扱いやすさ
- 安全性
を考えて構成されていることが多く、最初の1セットとしてバランスが良いです。
一歩を踏み出しやすくなる
金継ぎに興味があっても、
- 何を買えばいいのか分からない
- 道具をそろえて失敗したらもったいない
と考えて止まってしまう人は多いものです。
キットは、そんな「最初の一歩の壁」を越えるための、
ちょうど良い助走台になってくれます。
◆どんなセットを選んだら良いか?選び方のポイント
金継ぎキットといっても、内容やコンセプトはさまざまです。
ここでは、購入前にチェックしておきたいポイントを整理します。
本漆タイプか簡易タイプか
まず大きな違いはここです。
本漆タイプ
- 伝統的な技法に近い
- 質感や耐久性が高く、仕上がりも本格的
- 漆によるかぶれのリスクがあるため、手袋・作業環境・保管方法などの注意が必要
簡易タイプ(合成樹脂など)
- 乾燥が早く、扱いやすい
- 漆かぶれの心配が少ないものが多い
- 一方で、食器への使用可否や耐久性は製品による差が大きい
自分が、
- 「伝統技法としてきちんと学びたい」のか
- 「まずは雰囲気を楽しみたい」のか
どちらに近いのかを考えて選ぶと、後悔しにくくなります。
安全性と食器への使用可否をチェック
必ずチェックしたいのが、安全面の記載です。
- 食器として使う場合の注意点や可否
特に「お茶碗やマグカップとしてふだん使いしたい」場合は、
食器への使用可否が明記されているかをしっかり確認しましょう。
説明書や動画サポートの充実度
初心者には、言葉だけでなく、
- 写真や図解
- 動画での実演
があるキットの方が安心です。
レビューなどを見て、
- 説明が分かりやすいか
- 質問先やサポート窓口があるか
もチェックポイントになります。
対応している器の素材
キットによって、対応している素材が異なります。
- 陶器・磁器
- ガラス
- 金属 など
特にガラスは難易度が上がるため、最初は「陶器・磁器対応」のキットがおすすめです。
自分が直したい器の素材に合っているかどうか、記載をよく読んで選びましょう。
◆金継ぎキットを買ったら全体の流れを掴んでみよう
キットが手元に届いたら、いきなり作業に入る前に、
まずは「全体の流れ」をざっくり把握しておくと安心です。
ここでは、代表的な流れをシンプルに書き出してみます。
- 器の洗浄と乾燥 汚れや油分をきれいに落とし、よく乾かします。
- 割れや欠けの接着・仮止め 割れたパーツをマスキングテープで固定し、足りないパーツがないかどの順番でつけるかなど確認します。
- 欠けた部分やすき間の充填 パテや錆漆などで、欠けたところを埋めて形を整えます。
- 乾燥・硬化 → 研ぎ(やすりがけ) しっかり乾かしたあと、やすりで表面をなめらかにします。
- 中塗りここで塗ったところが景色となります。表面が滑らかになるまで塗って、研ぐを繰り返します。
- 上塗りと金(または代用粉)を蒔く 漆や塗料を薄く塗り、その上に金粉・真鍮粉などをのせます。余分な粉を払って、乾かします。
- 最終乾燥・仕上げ 再度十分に乾燥させ、必要に応じて軽く磨いて完成。
この流れを、ノートや紙にメモしておくだけでも、
- 「いま自分がどの段階にいるのか」
- 「次に何をすればいいのか」
が分かりやすくなり、途中で不安になりにくくなります。
◆最初にチャレンジする時の器選びと難易度
「どの器から始めるか」は、金継ぎの楽しさを左右する大事なポイントです。
初心者におすすめの器
- 小さめの陶器・磁器の器
- ふちに小さな欠けがあるお皿やマグ
- ひびが1本だけ入っている程度のもの
このように、形がシンプルで、欠けやヒビもシンプルなものから始めると、
失敗も少ないと思います。
最初は避けたほうがいい器
- 表面がザラザラしているもの
- 細かくバラバラに割れてしまった器
- 取っ手部分が折れたマグカップなど、負荷がかかる場所
- 思い入れが強すぎて「絶対に失敗したくない」器
- ガラス・複雑な曲面の器
最初のうちは、「失敗してもギリギリ許せるくらい大事な器」がちょうどいいラインです。
また、表面がザラザラしている器は汚してしまうと取れない事が多いので
初めのうちは釉薬のかかったツルツルをとした質感のものがおすすめです。
難易度の目安
- ★☆☆:ふちの小さな欠け、短いヒビ
- ★★☆:大きめの欠け、2〜3パーツに割れた皿
- ★★★:細かく砕けた器、複雑な形、取っ手や注ぎ口などの機能部分
最初は★☆☆レベルからはじめて、慣れてきたら少しずつステップアップしていくと、
無理なく続けられます。
おわりに:時間をかけて器との関係を育てる楽しみ
金継ぎは、壊れた器を「元に戻す」だけの行為ではありません。
時間をかけて手を動かしながら、
その器との関係をもう一度結び直していくような、不思議な魅力があります。
- 完成までの時間
- 待つことの多さ
- ちょっとした失敗ややり直し
そのすべてが、世界にひとつだけの器の表情になっていきます。
この記事が、
「ずっとしまい込んでいたあの器を、金継ぎで生まれ変わらせてみようかな」
と思うきっかけになればうれしいです。

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